佐藤正午 『Y』
でもそんな人間はどこにもいない。
僕はそのことを身をもって知った。
かけがえのない人間の代わりなどどこにも存在しない。
佐藤正午 『Y』
「かつて僕たちは親友だった」
見知らぬ男から渡されたのは一枚のフロッピーディスク。
納められていたのは過去に戻りたいと強く願った男が語る奇妙な物語。
帯の惹句には「究極の恋愛小説」とあるし、佐藤正午自身「恋愛小説家」として扱われることが多いようですが、どちらもちょっと的はずれ。
もちろん恋愛小説と言って言えないことはないけれど、SFぽくてミステリぽい、青春小説ぽくもあるすばらしい作品。
ぼくが一番好きな小説。
佐藤正午を本棚の特等席に並べるきっかけになった大好きな1冊です。
もともとこの手の話が好きなので、『リプレイ』も北村薫の三部作も面白く読みました。
でも、この『Y』は別格。
同じようなテーマで後発なので一見不利にも思えますが、まったくそんなことはありません。
むしろ『リプレイ』が面白かった人こそツボにはまるはず。
もともと上手さを感じさせる作家ですけれど、魅力的なプロットとあいまって至福の時が味わえます。
アマゾンの書評で「なぜ彼がそこまで思い込むのか理解できない」と書いている人がいました。
でもそこはあれ、女は上書き、男は別名保存。ですから。
ごくごく普通にあることではないかと(笑)
冒頭からぐいぐい引きこまれて、まさに一読巻置くあたわざる傑作です。
未読ならゼヒ!