2007.02.07
「それはどうかな。おまえはそのときもまだ彼の友達でいられると思うか。ビールを飲んで、昔話に花を咲かせられると思うか。そう思ってるなら、忘れることだ。今夜が過ぎると、すべてが終わるんだよ。わかるか、ジェイク?」
デイヴィッド・ベニオフ 『25時』
ひとりの若者が連邦刑務所に収監される前日、25時間目を迎えるまでの24時間を描いた物語。
全米瞠目の青春小説、というふれこみですが、ぼくはハードボイルドとしてすんなり読めました。
暗く重く乾いたトーンが心地いいです。
これといって何も起こらない。
現在進行形であるはずなのに”すべては終わったこと”として語られる。
若者よりもかつて若者だった人たちの心にこそより響く、と思えてしょうがないのでこれはきっと青春小説じゃありません。
むしろ中年小説と言ったほうがいいのかも。
たとえ偶然にでも手に取ったのであれば決して離さないほうがいい。
直感を疑わず黙ってレジに直行するとたぶん幸せになれるはず。

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2007.02.06
「だめ」彼女が冷静に言った。
「規則その一。むこうからたのまれないかぎり、かたわにてをかさないこと。いくら苦労していても、そのままほうっておきなさい。むこうは人にたのむことをおぼえなきゃいけないし、あなたはむこうになるべくやらせることをおぼえさせなきゃいけない」
「ぼくはいままでかたわとつきあいがなかったんだ」
「規則その二。ニガーは自分をニガーと呼んでいいし、かたわは自分をかたわと呼んでもいい。でも、五体満足な白人がどっちかの言葉を使ったら、ただじゃすまないわよ」
ジョン・ヴァーリイ 『ブルー・シャンペン』
うんとSFらしいSF、6篇が収められた短編集。
「プッシャー」
扉を飾るのは手垢のついたテーマを「ロリコンの変態おじさん」という切り口でさらっと魅せる佳品。
落ちはわかっているのに思わずにやり。
「ブルー・シャンペン」
表題作。
”黄金のジプシー”と呼ばれるハイテク外骨格を身につけることで身体の自由を取り戻した四肢麻痺患者の少女の恋物語。
これを読むだけで元は取れた!と確信する素晴らしい出来。
「タンゴ・チャーリーとフォックストロット・ロミオ」
謎の病原体に汚染されたため放棄された宇宙ステーションで発見された少女と犬たち。
困難を極める救出作戦の鍵を握るのはニュースを見た一般大衆の反応。
機械なのにいちばん人間らしいチクタクが愛しいです。
「ブラックホールとロリポップ」
ブラックホール・ハンターが太陽系辺境で狂気と直面する怖ーいお話。
読み終えた時の”宙ぶらりん感”が怖すぎてすてき。
久しぶりに読み返したけれどやっぱりよかったです。
満足満足♪

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2006.12.27
ご主人を追って旅する猫の視点を通して戦時下のイギリスを描いたお話。
人々の生活が淡々と乾いた筆致で語られるのが心地いいです。
児童文学ではありますが、猫が主人公だからといって変に擬人化することもなく、「戦争はいけないこと。平和はすばらしい」みたいな単純な二分法的オチもありません。
「それでも人は生きてゆくのだ」ということがしっかりと伝わってくるすばらしい作品。
もちろん、大人が読んでも十分楽しめます。
というより読まなきゃ損!

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2006.12.10
「私は呑んべえだが、アル中とは違う」
「どこが違うの?」
「私はいつでもやめたいときに酒がやめられる」
「だったらどうしてやめないの?」
「どうしてやめなきゃならない?」
ローレンス・ブロック『暗闇にひと突き』
【ネタバレ注意!】
若い女性ばかり8人を狙った“アイスピック連続殺人”
事件から9年が過ぎて、偶然逮捕された犯人は7件の犯行を自供したが、
6人目の犠牲者バーバラ・エッティンガーに関しては頑強に否定し、アリバイも立証された。
スカダーは、バーバラの父親から真犯人を探すよう頼まれるが…。
アル中探偵マット・スカダー、シリーズ第4作。
スカダーのファンであれば、『八百万の死にざま』とともに、シリーズ中最も心に残る1冊。
このシリーズをはじめて読む人は何も言わず2冊セットで!と言っても過言ではありません。
『暗闇にひと突き』は、シリーズの最高傑作にして重大な転換点となった『八百万の死にざま』につながる重要な作品。
『八百万の死にざま』以降、スカダーは酒を飲まなくなりました。
酒との関係が描かれないというのは、スカダー・ファンにとって悲しみ以外の何物でもなく、
依然として出来こそ素晴らしいけれど、そこに”アル中探偵”マット・スカダーはもういないのです。
奇想天外なプロット、あっと驚く真犯人、特異な登場人物を考え出す作家がいます。
一方、とりたてて目新しいことはなにもない、それどころか物語は何も起こらないにもかかわらず、作品を書き上げてしまう作家もいます。
ハナシのある作家がよいのかハナシのない作家がよいのか、読み手側で言えば、すじ読みするタイプなのか、行間を読むタイプなのかということなのですが、初期のマット・スカダー・シリーズの魅力はどちらかといえば行間優先、プロットはあくまでおまけにすぎず、事件に過剰なまでに感情移入し酒に逃避するスカダーの苦悩、ニューヨークの街並やそこに生きる人々に対する陰影豊かな描写にこそあったと思います。
だとするならば、より魅力的なのは『八百万の死にざま』以降か以前かは言わずもがな、と思われてなりません。
不動のオールタイムベスト1、明日死ぬならこの1冊!


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2006.11.17
最初はもちろん疑っていた。
始終猫に蹴つまずいて閉口するのではないかと思っていた。
が、驚いたことにまるで邪魔にならなかった。
朝、店を開けると、いつも私のくるぶしあたりに体をこすりつけにくるものの、それは朝食を催促する彼なりの方策で、そのあとはほとんど一日じゅう姿を見かけることすらない。
猫らしく足音を立てずに歩きまわり、物にぶつかったりしない。
時々、道路側の窓辺で日向ぼっこをしたり、高い棚に跳び上がって、ジェームズ・キャロルとレイチェル・カーソンのあいだでくつろいだりもするが、たいていはめだたず、いたっておとなしくしている。
ローレンス・ブロック 『泥棒は野球カードを集める』
アル中探偵マット・スカダーで有名なローレンス・ブロックのもう一つの代表作。
軽妙洒脱な会話が楽しいユーモア・ミステリです。
12年ぶりにシリーズが再開された6作目。
久しぶりに読み返したのですが、新しくレギュラーメンバーとなったラッフルズにばかり気を取られたのはたぶん間違いなく自分が猫を飼い始めたから。
引用したくだりではニヤニヤが止まりませんでした。
「一人暮らしで猫飼ってます」と言うと驚かれる事が少なくないのですが、泥棒バーニイ・シリーズがうんとメジャーになればそんなことも無くなるのかな、などととりとめのない事を考えてみたり。
色々と飼育書を買い込んでそれなりの覚悟を決めて飼い始めたのですが、あまりにも手がかからなくて拍子抜けしました。
唯一の難点は部屋探しが難しいこと。
ペット可物件でも実際には「小型犬のみ」というところが多くて苦労しました。
今住んでるとこはもともと「小型犬のみ」だったのを交渉してokもらったので、「猫飼いたい!」て人は交渉前提で探すといいかもしれません。
あ~、なんかすっかり「独り者猫飼いのすすめ」になっちゃってますが、再読なのでNP!ということで(笑)


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2006.11.16
ローレンスブロックというと、日本では”アル中探偵”マット・スカダー・シリーズの方が断然有名。
『ミステリ・ハンドブック』(ハヤカワ文庫HM)の「ミステリ通になれる作家論特集」でも、
ブロックのところは”マット・スカダー論”になっています(笑)
とっても魅力的な”泥棒さん”(←こういうイメージがあるのです)バーニイ・ローデンバーが活躍するこのシリーズ、
やっぱり、”泥棒シリーズ”と呼ぶしかないのでしょうか?
今ひとつ盛り上がらない理由はこのネーミングにあると思うのですけれど…。
閑話休題
およそ12年の空白を経て再開されたシリーズ6作目。
通常、シリーズものを人に勧めるときは、多少不都合があっても1作目から読むことを勧めるのが普通です。
でも、久々に”バーニイもの”を読んでみて、これは、ちょっと…、と今回は考えを改めました。
シリーズものを最初から読むことを勧めるのは、レギュラーメンバーがシリーズの魅力になっている場合が多いせいです。
この、”バーニイ・シリーズ”にも当てはまるのですが、作者がこの作品を書くまでに12年間の空白があったことが、問題。
もちろんいい意味で(笑)
この書評を書くにあたって、未読だった『泥棒は抽象画を描く』と、文庫入りした『泥棒は野球カードを集める』を一気に読んだのですが、ブロック、12年の歳月を経て格段に上手くなっています!
もともと文章力には定評のある作家で、その魅力がよくわかる彼の短編集(同じくハヤカワ文庫HM)を人に勧めることが多かったのですけれど、本作を読んで、改めて彼の力量に唸らされました。
全く上手い!
軽妙な会話、巧みなプロットを生かす、”華やかな軽み”とも言うべき、洒落た文章。
スカダーものを読むときはついつい過剰に感情移入してしまい、我を忘れている部分がありますが、
こういう”よくあるハナシ”を読むと、彼の上手さが際立ちます。
愛書家でプロの泥棒バーニイが活躍するユーモア・ミステリ。
パーネル・ホールの『探偵になりたい』(ハヤカワ文庫HM)なんかが好きなヒトは、きっと気に入ります♪
そういえば、こっちもしばらく読んでないや…。




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2006.11.11
「はじめからそう頼めばよかったのだ。どうして、最初から真実を告げなかったのだ?」
「あなたが、わたしの種族を救いに来てくれるかどうかわかりませんでした。船のためならば来てくれるだろうと思ったのです」
「きみのためだけで充分だったのだ。わしらはパートナーなんだぞ。なあ、そうじゃないのか?」
ジョージ・R・R・マーティン 『フィーヴァードリーム』
吸血鬼と人間の間に友情は成立するか?というめちゃめちゃ魅力的なテーマの物語。
舞台は南北戦争前夜、蒸気船全盛時代のアメリカ南部。
じっくりと書き込まれた時代背景、効果的に張り巡らされた伏線、男と男の信頼と友情の物語が重厚に積み上げられて、至福の時を味あわせてくれます。
”男と男の信頼と友情”なんて手垢のついたテーマですが、主人公マーシュ船長とジョシュア・ヨークの間に立ちふさがるのは種族の壁。
”捕食者と獲物”という困難な状況が友情の美しさを一段と気高いものにしています。
それともうひとつ、忘れちゃいけないのが、
「珠玉の青春小説にしてグルマン小説でもある…」(北上次郎)
このお話、妙に食事シーンの描写が細かいのです。
おまけに出てくる料理のうまそうなこと!
オールタイムベストには必ず入れる大好きな作品。
オススメです。


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「今朝、港で猫の死体を見た」
という一文ではじまるこの作品、「最も好きな小説を挙げろ」と言われたときに真っ先に思いつく作品の一つで、めったに再読なんぞしないぼくにとって、数少ない愛読書と言えるかもしれない存在だったりします。
まあ、凹んだときに手に取りがち…というのもあるのですが(笑)
なんとなく浴槽にもぐりこんでしまった”ぼく”を描いたデビュー作『浴室』が有名ですが、初めてトゥーサンを読んだのはこの『ためらい』で、その後、他の作品も繙いたものの、やっぱり一番のお気に入りは『ためらい』。
ここの書評で、よく「ハナシのない話が好き」と書いていますが、これはその典型です。
ベビーカーに乗せた息子を連れた”ぼく”の日記のような独白のような、これといったスジもなければ、ヤマ場もなく、ちょっぴりミステリっぽい匂い、サスペンス風な雰囲気が漂ってきたりしながら思いこみ?妄想?な文章はふらふらと…。
読み終えると、『ためらい』というタイトルそのものな気持ちがします。
なんとも形容しがたい小説で、人に勧めづらい代表格。
本国での評価も賛否真っ二つだったそうで、これ、ダメな人は全然ダメだと思います。


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月面で発見された深紅の宇宙服を着た死体。
綿密な調査の結果、死後五万年以上経過していることが判明した。
一体彼は何者なのか?
もう最高です。
おそろしくSFらしいSF。
まさに”センス・オブ・ワンダー”というやつで、このアイディアだけでご飯三杯はいけます(笑)
文章はお世辞にも洗練されているとは言えないし、むしろ物語は"二の次"的な印象もあります。
でも、トリックが出尽くして文学へ傾斜してゆくことになったミステリとは違い、SFはまだまだ”面白いハナシ”を考えた人が勝ち!
『星を継ぐもの』はまさにそういうお話で、もうこれでもかとばかりに謎が謎を呼び、その解決は素晴らしくSF的で…♪
中の人はこれ書いてるとき楽しくてしょうがなかったんだろうなあ、という気がします。
キズはあるものの、というかもうキズだらけの気もしますが(笑)、これはアイディアが全て。
だってご飯三杯ですもの(笑)
小説として、SFとして、おそらくは数多くの欠点を持っているこの作品には、そのすべてを帳消しにする魅力がある。
読んでいる内に、胸がワクワクしてくるのだ。
サイエンス・フィクションなのだ、これは。
解説:鏡明
そう、胸がワクワクするのです。

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2006.11.10
前作から実に11年ぶり、鳴り物入りで遂に登場した『ハンニバル』
サイコ・スリラーと言えば『羊たちの沈黙』、というくらいミステリ史に残る存在だった前作。
その続編と言われれば、否応なしに期待も高まります。
『羊』以降、巷に溢れかえった猟奇殺人、サイコものにはウンザリしてたので「真打ち登場!」と期待してました。
でも、素晴らしい出来だった『レッド・ドラゴン』、『羊~』を期待してコレを読むと、きっと期待は裏切られるはず。
どんなに残酷な描写を続けられようとも、『羊~』を読み、その後のサイコ・スリラー・ブームを経験した読み手は、ち~っとも怖くなんか感じない(笑)
正直、「ダメだ、こりゃ…」と思いました。
テクニックは衰えてないけれど、今更こんなハナシじゃね…と。
が、惰性で読み終えるはずだった下巻、ラスト。
うひゃああ!!
なんじゃ、こりゃあ?!
と、と、とんでもないことしやがった、このジジイ!(笑)
何のことはない、このラストを書かんがために、『ハンニバル』は生まれたのでしょう。
しかし、11年も経ってから、こんなオチつけるか、普通…orz
”世界一怖い話”だったのが『羊』、そして、”世界一気持ち悪い話”が『ハンニバル』て感じです。


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スクールバスを乗っ取った脱獄囚とFBI捜査陣が行う人質解放交渉劇を描いたサスペンス。
犯人との緊迫したやりとりが全編に渡って続き、まさに手に汗握る思い。
思わす息を止めて読み続けてしまい、妙にハアハア言ったりとか(笑)
しっかりしたプロットと緻密に裏打ちされたディテールだけでも読み応えある水準以上の出来となっていますが、ディーヴァーは更に一ひねり。
囚われたスクールバスは聾学校のもので、引率の教師も含めて人質は全員聴覚障害者。
そのため交渉は難航をきわめて、物語に一層の緊張感を与えています。
単なる設定では終わらせず、リアルに描かれる聴覚障害者の世界もまた読みごたえたっぷり。
解説の茶木則雄が絶賛するのも当然なすばらしい作品です。


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キース・ピータースンの作品だから押さえとこう、くらいの軽い気持ちで読み始めたものの、やめられないとまらない!
「ああ、小説とはこういうものなのだ…」と思わずつぶやいてしまうすばらしい出来。
死刑執行直前の囚人の冤罪を晴らすデッドリミット型サスペンス、さほど目新しく感じられない、むしろ手垢のついたテーマではありますが、しかししかし、ピータースンを侮っちゃいけません。
巧妙なプロット、読者をぐいぐいと引き込んで離さないスピーディーかつサスペンスフルな展開、一人称と三人称が交錯する特殊な構成をきっちりとまとめ上げた手腕もさすがの一言。
解説は日本ランシング・ファンクラブ飯田橋支部支部長補佐(笑)の茶木則雄。

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キース・ピータースン、アンドリュー・クラヴァン、マーガレット・トレイシーと3つの筆名を持つ兄弟作家。
事件記者ジョン・ウェルズシリーズの第1作。
「語り口の上手い作家は数多くいるが、上手くて酔わせるという意味では、現代の作家ではディック・フランシスやブロック以外数人」
『幻の終わり』(創元推理文庫)解説:池上冬樹
という言葉を信じて読んでみましょう。
とにかく上手い!
彼の作品を読むと、主人公に同化せずにはいられません。
で、同化すると、酒量が増えてとんでもないことになる…(笑)
ただ、主人公の設定など、取り立てて目新しいことはありません。
「トマス・H・クックやジェイムズ・リー・バークに比べて、キース・ピータースンが群をぬいているわけではない」
産経新聞『夏の稲妻』書評:北上次郎
娘に自殺されたという暗い過去を持ち、
ヘビースモーカーで酒呑みで、
いまだにタイプライターを愛用する昔気質の頑固者で、
自らの規律を持ち、信念のためにはそれを押し通す、
おまけに皮肉屋で正義漢…
言っちゃあ何だが、このタイプはハードボイルドの世界には掃いて捨てるほどいる。
『裁きの街』解説:茶木則雄
で、十二分なテクニックに支えられた傑作である他に何があるかというと、「主人公を脇役と入れ替える」という前代未聞の荒技をこなしています。(←ウソです)
ああ、ランシング、ランシング…。
この一連のシリーズを手にした男性諸君は我らがランシングの魅力にイチコロのはず!
茶木則雄えらい!よくぞ言った!
そう、この作品ははランシング・シリーズと銘打つのが正しいのです!
誰がなんと言おうとも!!
要するに、類い希なるハードボイルドの傑作であると共に、人類の歴史上もっとも魅力的なヒロインが登場する物語である、ということです(笑)

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…。
何も言わん。俺を信じて読んでくれっ!
で終わりにしようかとも思ったのですが、さすがにそれはないだろうと(笑)
母親はヤク中の売春婦、父親の顔は知らず、掏摸で食い扶持を稼ぐストリートキッドだったニール。
11歳の時にはじめて捕まった相手、”朋友会”の探偵ジョー・グレアム(片腕の小妖精)にアシスタントとして使われることになり、探偵に必要なイロハ、そして生きるために必要なあらゆることを教わる。
回想シーンとして語られるグレアムとニールのやりとりがもうたまらない。
”ナイーブな心を減らず口で隠して…”というのはハト派ハードボイルドのお約束のようなものですが、この疑似親子関係、「父と子」というテーマに弱いぼくにとってはまさにツボです。
全編にわたる軽妙な会話も心地よいですし、”朋友会”に拾われたといっても天涯孤独の身に変わりはなく、
ストリートキッドとしての過去を背負い続けなければならないニールの悲しみ、いつの日か英文学の教授になり、死ぬまで本に埋もれて暮らしたいと思いながらも、生活のためには”朋友会”の仕事を続けざるを得ないニールの姿が、物語全体に今にも壊れそうな脆さ、”ナイーブな”トーンを漂わせています。

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うひひ…面白かったです、すっごく!
『極大射程』、『ダーティホワイトボーイズ』、『ブラックライト』と続くボブ・リー・スワガー四部作のトリなのですが、これを読むとどうして『極大射程』の評価があんなに高いのか、?な気持ちになります。
それまでの三作品ではよくあるヒーロー像、それも思いっきりステレオタイプなそれ、というイメージしかなかったボブ・リーが『狩りのとき』では極めて人間らしい人間として描かれています。
そして、ボブ・リー以上に魅力的に描かれたのがそれまでは単なる便宜上のキャラクター、脇の中の脇、ただの固有名詞でしかなかったダニー・フェン伍長(兵長)。
前三作に比べて格段に上手くなった!という感じがします。
恐ろしく緻密に書き込まれたディテールが他のキズを補ってあまりある、というのが『極大射程』以降の評価だったと思うのですが、この『狩りのとき』にはなんの留保もいりません。
こうして振り返ってみるとこの四部作、はじめから構想にあったわけではなく『極大射程』のヒットにつられて四部作を名乗ってみました、というのがホントなのではないでしょうか?
作品ごとに書き方を変えた、と強弁するには通して読んだときにバラバラな感じがあまりにも強すぎます。
もちろん、個別に読む分にはどの作品も水準以上の満足を与えてくれるのですが、これが関連したひとつながりの作品、と言われてもちょっと…。
色々書きましたが、前作を読んだ人もそうでない人もきっと満足する傑作冒険小説であることは間違いありません。
何はともあれ、ぜひご一読を…。


書評サイト Loud Minority: スティーヴン・ハンター 『極大射程』
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一人の男がエスカレーターに向かって足を踏み出す。
いつものように右手を手すりに伸ばそうとして持っていた紙袋を左手に持ちかえる。
はて、この紙袋には何が入ってたんだっけ…。
今日の昼休み、半パイント入りの牛乳を買った。
その時にストローはいるかときかれて
(そう、ストローと言えばストローがコーラの缶から浮き上がるのを初めて見た時は、我が目を疑った)
ストローを断って紙袋をもらった。
そもそも自分はどうして紙袋をもらったんだろう、たかだか半パイント入りの牛乳ひとつのために。
高校生のころはよく紙袋を断って、クールに片手で持って店を出ていた。
(でも、なぜ、あのころの私はそんなことをしていたのか…)
てな具合に思いつきが思考を呼び、思考は思いつきを呼ぶ。
エスカレーターに向かって足を踏み出すところから、中二階に降り立つまでの数十秒間に頭をよぎった”様々な事柄”を語るだけのために191ページ!を費やした変な小説。←ほめてます
しかもその”様々な事柄”というのが、ミシン目やストローに対する愛着だったりトイレの便座についての考察だったりと、些末なことこのうえない(笑)
書いた人もそうとう変だけど、それを面白がるぼくはもっと変?
とにかく、こんな変な小説めったにない。
怖いもの見たさでも、興味本位でも、一読の価値はあります。
ジャン=フィリップ・トゥーサンを偏執狂にするとこんな感じ?(笑)

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モダンホラーといえばこの人、と言うくらい有名ですが、実はキングちゃんと読むのはこれが初めてでした。
というのも、ぼくはバリバリのクーンツ信者。
それに、基本的に怖い話は苦手です…(へなちょこ)
昔読みかけた『IT』を途中で放棄して以来、「やっぱりキングは怖い話を書く人なんだ」と手を出さずじまいでした。
とはいうものの、愛読してる宮部みゆきがキング読む人。
なので、宮部みゆきファンとしてはずーっと気になってたんです、キング。
で、これは超能力物だし、『クロスファイア』の書評書く時に使えるかなあ、と。
面白かったです。
すっごく。
まあ、好みを言えばやっぱりクーンツのバカ話のほうが好きなんですけど、キングは「巧さ」を感じさせる作家なのですね。
クーンツの場合はキズと一緒に巧さも吹っ飛ばしてしまうというか(笑)、上手下手、作品の評価など考える間もなく強引に引き込んで、結果、「ま、これはこれでいいか」と思わされてしまう。
そういった意味では、キングは大人向きなのかなあ。
はやく大人になりたいです。(←バカ)
ただ、当たりはずれの多いクーンツと違って、キングなら何読んでも大丈夫なんじゃないでしょうか。
1冊しか読んでないのに、こんなこと言う方も言う方だけど、それくらい「巧い感じ」のする作風です。
また、楽しみな作家が増えました。
老後にまとめ読みでもしたいです。


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ある雪の日、誰も知らない現金440万ドルを見つけたハンク・ミッチェルと兄のジェイコブ、その友人ルー。
何も危険は犯さず、誰にも害は及ぼさない…。
安全に金を手に入れるため、3人がたてた”シンプルな計画”は…。
’94年に邦訳が出版され、日本でも人気を博したサスペンス小説。
当時は「御大スティーブン・キング絶賛!」の帯が付いてたような…。
日本での映画公開の時もまたちょっと話題になりました。
静かに狂気へと落ちて行く感じ、わずかなほころびが、また少し、また少しとほどけてゆくような、派手さはないものの、思わずひやりとする傑作サスペンスです。
味わいとしては、パトリシア・ハイスミスに近い感じがします。
もっとも、こちらの方は、プロット、人物造形ともに文字通りシンプル!
なので、好き嫌いが真っ二つに分かれるハイスミスより万人向け。
人が静かに壊れゆくさまが、雪のシーンとぴったりくるはずなので、映画にも期待してみましょう。
むか~し、バイト先でお客さんに勧められて読んだ思い出の1冊でもあります。

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紆余曲折はあったものの、日本語でも刊行順に読めるようになったボブ・リー・スワガー・シリーズの第1作。
シリーズものは最初から読むようにしているので、これがボブ・ザ・ネイラーとの初めての出会いになりました。
もともと冒険小説は大好きなのですが、話題のベストセラー『極大射程』がこういうハナシだとは思いもしませんでした。
一言で言えば、「ランボー’99」(笑)
べたべたのヒーローものスリラー、今時こんな話が受けるなんて、ひょっとして冒険小説復活の兆しなのかしら?と。
プロット、登場人物ともにそれなりに工夫はされているけれど、類型的と言えば類型的。
でもでも、スナイパー、射撃技術に関する細かな描写が盛り上げる現実感、そして読者を一気に引き込んでゆくスピーディーな展開はキズを補ってあまりあるポイント。
久々にこういう話読んだなあ。
続きも読もう!という気にさせられました。


書評サイト Loud Minority: スティーヴン・ハンター 『狩りのとき』
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修道士カドフェル・シリーズの第1作。
12世紀のイングランドを舞台にしたミステリ。
なんといっても魅力的なのは、主人公ブラザー・カドフェル!
十字軍の遠征に参加した過去を持ち、中年を過ぎてから心の平穏を求めて修道生活に入った元船乗りという異色の経歴を持つ修道士。
イスラムの地で身につけた医療技術を買われて薬草園の管理を任されています。
院内にもめ事、刃傷沙汰が持ち込まれると、俗世の事はよくわからんとばかりに、彼にお呼びがかかるというわけです。
ミステリのスタイルはとっているものの、基本的には人情話。
池波正太郎の鬼平に近いノリでしょうか。
事件に巻きこまれた人々に対するカドフェルのあたたかい視線が読みどころになっています。
登場人物の多くがシリーズに再登場するので、1作目から順番に読むことをオススメします。
NHKのBSでイギリスのドラマ・シリーズが放送されていたので、ご存知の方も多いかも。
イギリスでは非常に人気のあるシリーズで、ドラマでカドフェル役を演じた役者さんは叙勲されたとか。
実在の修道院であるシュルーズベリ修道院もカドフェル人気で地元観光の目玉になっているようです。
行ってみたい!

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太陽系最高の頭脳を持つ天才物理学者マッカンドルー博士。
博士とと女船長ジーニーが遭遇する驚異の出来事を描いた傑作ハードSF。
本が好きだという人でもSFというと、守備範囲外という人はかなり多いでしょう。
ましてハードSF(サイエンス・フィクションのサイエンス重視のもの)となると、いったい何人の人がここを読んでくれてることか。
しかし、この『マッカンドルー航宙記』はよくできたすべての小説がそうであるように、ジャンルの壁などというものは飛び越えてしまってます。
絶体絶命のピンチを切り抜けるマッカンドルー博士の活躍は、
SFというよりも、むしろ本格推理での名探偵の謎解きに近いものがあります。
科学理論が難しげ、とはいっても、本格推理で巧みに張り巡らされた伏線に気がつかないのと同じようなもの。
ただ身を委ねて楽しめばいいだけです。
『黒後家蜘蛛の会』好きな人ならきっといけるはず。

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2006.11.09
「いちばん手っ取り早く、いちばん安全に大金を稼ぐ方法は何か?」
“成功と幸福をつかむための十則”、武装強盗として成功するための 10ヶ条を思いついたフランクは、ひょんなことから知り合った自動車泥棒スティックと組んで強盗稼業に乗り出す。
そして訪れた“酒とバラと強盗の日々”。
犯罪小説を書かせたら右に出る者はいない、エルモア・レナードの1976年の作品。
クエンティン・タランティーノが映像化した『ジャッキー・ブラウン』の原作者と言うと、
「ああ!」と納得する人も多いのではないでしょうか。(←『ラム・パンチ』(角川文庫))
『ジャッキー・ブラウン』の他にも4作品の映画化権を所有する彼はレナードの大ファンで、
はじめてレナードに電話した時、
「イキがるわけじゃないけど、ぼくはあなたの小説を映画化するためにこの世に生まれた男だと思っています」
と言ったとか。
エルモア・レナードは、ぼくが大好きな作家の1人でとても心穏やかには語れないのですが、そのレナード作品の中でも最も好きな1冊。
レナード・タッチと呼ばれる独特の語り口が色濃く出ていてファンならずともたまらないものがあるし、いきいきとした魅力あふれる人物造形も出色。
犯罪者をこれほど魅力的に描く作家は他にはいません。
彼のもう一つの特徴である、先の読めないストーリー展開(変幻自在の変化球ピッチャーにたとえられる)こそ見られませんが、だからといって侮るなかれ。
どんな球種を放ろうと、すばらしいピッチャーであることにはかわりがないのだから。
『レザボア・ドッグス』好きな人ならまさに直球ど真ん中です!
本書の主人公の1人、スティックの7年後を描いた名作『スティック』(文春文庫)も絶版…orz
文春さん、なんとかしてくれ~!





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小児専門の臨床心理医アレックスが活躍するハードボイルド・ミステリ。
なにより臨床心理医という主人公の設定が新鮮、目新しくてよかったです。
作者自身医師であるだけにカウンセリングなど治療場面の描写はよくできていて、読みどころと言っていいでしょう。
ただ、扱われる事件は幼い子供が関わる目を背けたくなるようなものが多くて少々堪えます。
ストーリーの暗さが魅力でもあるのですが、なまじ描写が迫力あるだけに下手なホラー小説より怖く感じる人がいるかもしれません。
アメリカ社会の病んだ部分に光を当てようとする社会派としても、ハト派破滅型ハードボイルドとしても一級品。
親友の刑事マイロがいい味出してます。

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ゲイでヒスパニックの弁護士ヘンリー・リオスを主人公にしたハードボイルド・ミステリ。
ゲイ・ミステリ版『長いお別れ』と評されたシリーズ第1作。
パッと見、キワモノと思われそうですがホモ・セクシャル、ヘテロ・セクシャル関係なしに非常によくできた1冊。
ゲイを主人公にしたミステリというとジョゼフ・ハンセンのブランドステッター・シリーズが有名ですが、
このマイケル・ナーヴァもなかなかどうして捨てがたいです。
基本的にはハードボイルドのオーソドックスな仕立てそのまま。
ただ、本作の主人公は巷の探偵たちがぶつかる障害のほかに、ゲイであること、ヒスパニックであることに対する偏見とも戦わなければなりません。
己の矜持を貫くことがハードボイルドの探偵達に要求されるものならば、
主人公ヘンリー・リオスの戦いのなんと厳しいことか。
事件を追うにつれて、ヘンリーの恋愛模様も絡んでくるのですが、これがまたよくできてます。
毛深い足にほおをすりよせる趣味はないけれど、へたな恋愛小説読むよりぐっと来ました。
訳はそのスジでは定評のある柿沼瑛子(笑)
ミステリ・ファンなら押さえておいて損はないです。

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登場人物に対する主人公の”優しい視線”が魅力のハードボイルド・ミステリ。
傷つきやすさを軽口で覆う、心優しきハト派ハードボイルドです。
地味な作品ではありますが、プロットの出来はしっかり十分。
なのでハードボイルドと言わず単純にミステリとして読んでも十分楽しめるクオリティです。

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ロサンゼルスにあるユダヤ教徒のコミュニティで発生したレイプ事件。
厳格な戒律に従う彼らとの間には宗教の壁が立ちはだかり、捜査は難航する…。
これは、やったもん勝ち、というか舞台設定の魅力がすべて。
ミステリとしての出来はもちろんよいけれど、
敬虔なユダヤ教徒の生活という異文化をのぞく楽しみが非常に魅力的です。
本筋であるレイプ事件の他に、捜査にあたるデッカーとコミュニティの住人リナとの恋物語がもう1本の軸となるのですが、
こちらのほうはシリーズ通してのお楽しみになります。
ハリソン・フォードの『刑事ジョン・ブック』が面白かった人には特におすすめ。


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2006.10.18
「鷲は舞い降りた」
SS長官ヒムラーの元に届いた1通の暗号電は、チャーチル首相誘拐をねらったドイツ軍落下傘部隊が極秘裏にイギリスに潜入したことを示していた。
ジャック・ヒギンズ『鷲は舞い降りた 完全版』
チャーチル誘拐というプロットだけでも、ものすごく魅力的で血沸き肉踊る!という感じですが、この作品の魅力はそれだけではありません。
戦争という狂った時代にも己の矜持を貫いてしまう“ロマンティックな愚か者”たち、
ドイツ軍中佐クルト・シュタイナやIRAのリーアム・デヴリンたちに心惹かれずにはいられません。
完全版は初版では削られていた登場人物のエピソードを補ったもので、はじめて読む人はもちろん、旧版を読んだ人でも大満足の1冊と言えます。
冒険小説の金字塔と言われているけれど(『ミステリ・マガジン』(早川書房)の冒険小説ベスト(読者の人気投票)第1位(1992))、ハードボイルド好きにもきっと響くはず。
書評というものを初めて意識したのは中学生の頃。
北海道新聞の連載で北上次郎の『鷲は舞い降りた』の書評を読んで、本書を手に取った時のことは今でもよく覚えています。
そういう意味でも非常に思い入れのある作品。
未読であればゼヒ。
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ヘミングウェイの未発表短編集(1987年当時)。
生前、発表されなかった遺稿7編が収められています。
表題作「何を見ても何かを思いだす」は息子の持つ暗い一面を前にした父親の苦悩を描いた作品。
個人的に”父と子”というテーマに弱いので、こういう話を読むと心がざわざわと波立ってしまいます。
この作品と「本土からの吉報」を読むためだけでも買う価値はあるかと。
ヘミングウェイの作品では最も好きな1篇。
これがあったからこそ「ヘミングウェイが好き」と他言できるくらいに。

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2006.07.26
ケビン・コスナー主演で話題になった映画『フィールド・オブ・ドリームス』の原作。
主人公レイ・キンセラはある日不思議な声を聞く。
「きみがそれを作れば、彼はやってくる」
声に導かれるままにトウモロコシ畑をつぶして野球場を作り、旅に出て…。
「映画は見たよ。でも野球そんなにくわしくないし…」という人、
「野球は好きだけど、シューレス・ジョーってアメリカのずっと昔の選手でしょ。あんまりねえ…」という人、
あなたは間違ってます。
『シューレス・ジョー』(『フィールド・オブ・ドリームス』)は野球好きや郷愁に駆られるアメリカ人のためのものではなく、夢をもったすべての人のための作品、夢が現実になった世界一幸せな男を描いた作品なのです。
野球やシューレス・ジョー・ジャクスン、J.D.サリンジャー(テレンス・マン)は単なる道具立てに過ぎない。
このことはキンセラが編集者から受け取った次のような手紙からも明らかでしょう。
あなたはご自分の作品のなかで、とりわけ今日ではほんのひと握りの作家にしかよくなしえないことをなさっています─それは読者に作中人物を愛させるということです。
彼らは暖かい輝きを発しています。
彼らはとてもリアルで、傷つきやすく、善良で、生きること、愛すること、夢を追うことを価値あらしめる人間性の一面を想起させます。
少なくともわたしは読みおわったとき甘美な微笑を頬に浮べ、快い涙を目に浮べていました─そしてその日一日は生きていることの喜びをしみじみと感じました。
あなたに感謝します。

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ハンガリー独立をねらったサンドルフ伯爵は、密告により仲間、財産、すべてを失った。
15年後、謎の人物アンテキルト博士に姿を変えた伯爵は、復讐を開始する。
ジュール・ヴェルヌがデュマの『モンテ・クリスト伯』に捧げたオマージュ。
100年経っても大丈夫(←バカ)。
デュマの『モンテ・クリスト伯』を下敷きにした冒険譚なのだが、これが面白い。
もちろん現代の作品と同じ感覚で読むわけにはいきませんが、ヴェルヌの作品としてもうちょっと日が当たってもいいはず。『十五少年漂流記』や『海底二万マイル』は小学生の頃愛読してたので久々に童心に返ってしまいました。
”集英社文庫 ジュール・ベルヌ・コレクション”、表紙がかっこいいです。


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